特集 小児外科疾患のQOL;最近の話題
成人期に達した胆道閉鎖症術後自己肝生存者
大久保 龍二
1
,
和田 基
1
,
佐々木 英之
2
,
仁尾 正記
3
Ryuji Okubo
1
,
Motoshi Wada
1
,
Hideyuki Sasaki
2
,
Masaki Nio
3
1東北大学大学院医学系研究科外科病態学講座小児外科学分野
2宮城県立こども病院外科
3国家公務員共済組合連合会東北公済病院
pp.536-539
発行日 2025年5月25日
Published Date 2025/5/25
DOI https://doi.org/10.24479/ps.0000001198
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はじめに
胆道閉鎖症(以下,本症)は,新生児期から乳児期早期に発症し,原因不明の硬化性炎症により肝外胆管が閉塞し,肝から十二指腸への胆汁排泄が途絶する,代表的な小児の肝胆道疾患の一つである。外科的治療法である葛西手術の成績は時代とともに向上し,さらに1980年代以降に肝移植が普及したことで本症の生命予後は著明に向上している。しかしながら,長期自己肝生存例が増加したことにより,続発症である胆管炎や門脈圧亢進症の他,悪性腫瘍など,妊娠・出産における肝病態の悪化などさまざまな問題が顕在化してきている。2015年には,長期的な療養が必要な希少難治性疾患として指定難病に認定され,患者・家族への支援の取り組みがなされるとともに,本症に対する厚生労働科学研究補助金による政策的な調査研究も継続されている。また,日本胆道閉鎖症研究会が主体となり『胆道閉鎖症診療ガイドライン』(以下,ガイドライン)の改訂1)がなされ,長期自己肝生存例で近年報告のある肝腫瘍に焦点をあてたクリニカルクエスチョン(以下,CQ)が新たに設定された。

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