特集 急性虫垂炎:診断,治療,研究
「やぶれそうな」虫垂炎をエコーで診断する
吉元 和彦
1
Kazuhiko Yoshimoto
1
1熊本赤十字病院小児外科
pp.721-723
発行日 2023年7月25日
Published Date 2023/7/25
DOI https://doi.org/10.24479/ps.0000000507
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はじめに:虫垂炎診断の変遷
1890年ごろ,McBurneyは問診と身体所見を基に早期に手術することで,当時死亡率30%前後と死に至る病であった虫垂炎の患者20名以上を1名も失うことなく治療したと報告している1)。虫垂炎が原因で死亡することは現代ではまれだが,画像診断がない時代には虫垂炎の診断・治療は救命が目的だったようである。それから100年後,虫垂炎で亡くなる人は劇的に減少し,虫垂炎の診断には正確さが求められるようになった。画像診断,特に小児ではエコーの発展により,診断能力は格段に進歩し,高解像度プローブを用いることで,いわゆるnegative appendectomyは1%程度にすることが可能となった2)。さらに20年以上経過した現在,小児においては体表に近ければ15MHz前後の高周波プローブが腹部に使用でき,理論上の解像度は約0.1mmになっている。数cmの深部でも7MHz以上の周波数のプローブを使用できるため,0.2mm程度の解像度の画像で判断できることが多い。これは弱拡大の顕微鏡レベルの画像情報を術前に得ることが可能になったことを意味しており,今や虫垂炎の病理学的な変化や実際の手術所見を文字どおり体外から透視できるようになっているのである。今日では,「やぶれた」虫垂炎ではなく,「やぶれそうな」虫垂炎だと診断することができるということについて述べる。
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