外科の常識・非常識―人に聞けない素朴な疑問・32
虫垂炎にCT検査は必要か
須原 貴志
1
Takashi SUHARA
1
1下呂市立金山病院外科
pp.1079-1081
発行日 2006年8月20日
Published Date 2006/8/20
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1407100954
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虫垂炎診断は触診のみで容易と言われているが,一方で切除例の20%前後で手術が不要である事実1)をわれわれ外科医は率直に反省し,理学所見や血液検査所見に加えて画像診断を駆使し,正確な診断に努めるべきである.
しかし,ベッドサイドで簡便にできる超音波検査(以下,US)に比べて,かつては虫垂炎診断にCTを施行することについては否定的な意見は多かった.CTが医療現場に登場した当初は,骨盤部でartifactを生じやすいなど画像の鮮明さに難があった.1987年にBalthazerら2)は経口的に希釈バリウムを投与した状態で診断率76%としたが,これは逆に経口的に希釈バリウムを投与しない状態では,さらに診断率が下がるであろうことを意味した.一方で,理学所見や血液検査所見を主とした診断方法で20%前後が手術不要であったということは,裏を返せば,これだけでも8割方が診断できるということでもあり,虫垂炎診断能においてCTは必ずしも魅力的な検査とは言えなかった.さらに当時は装置の普及が不十分であり,かつ検査時間も比較的長かったため,虫垂炎診断のためにCTの検査枠をとることは罪悪視されていたとすら言える.
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