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1 疾患概念
血球貪食性リンパ組織球症(hemophagocytic lymphohistiocytosis:HLH)は,以前は血球貪食症候群(hemophagocytic syndrome:HPS)とよばれていた症候群である。HLHは,発熱や肝脾腫などの臨床症状と,汎血球減少,高トリグリセリド血症,低フィブリノーゲン血症,NK細胞活性低下,高フェリチン血症,可溶性インターロイキン2受容体高値などの異常検査所見によって特徴づけられ,骨髄やリンパ節では血球貪食像を伴う組織球の浸潤が認められる。HLHは発症の原因によって,単一遺伝子異常による「一次性HLH」と,他疾患に続発する「二次性HLH」に分類される。「一次性HLH」として,細動障害性顆粒放出にかかわるパーフォリン遺伝子の異常をはじめとした家族性HLH(Familial HLH)が含まれている。また,「二次性HLH」には,感染症,悪性腫瘍,自己免疫性疾患,薬剤,造血幹細胞移植など多岐にわたる疾患に続発する1)。日本におけるHLHの疫学調査2)によると,発症率は年間80万人に1人であり,0~30歳までの小児および若年成人で全体の約7割を占め,残り3割は60歳以上の高齢者を含む成人での発症であった。HLHの原因別にみると,感染症関連HLHが全体の53.1%ともっとも多く,そのなかの約半数(全体の28.7%)をEB(Epstein-Barr virus)ウイルス関連HLH(EBV-HLH)が占めており,ヒト単純ヘルペスウイルス(HSV),水痘帯状疱疹ウイルス,サイトメガロウイルス(CMV),ヒトヘルペスウイルス6,エンテロウイルス,アデノウイルス,ヒトパルボウイルスB19などさまざまなウイルスが原因として同定されていた。その他,リンパ腫関連HLHが19.0%,自己免疫疾患関連HLHが9.3%,原発性(一次性)HLHが3.5%,造血幹細胞移植後HLHが1.9%,その他のHLHが8.8%となっていた。年齢別にHLHの原因をみてみると,1歳未満では一次性と感染症(とくに単純ヘルペスウイルス),小児~若年成人まではEBウイルス,60歳以上の高齢者ではリンパ腫がもっとも多い原因であった(表1)。
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