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増刊号 小児疾患診療のための病態生理3―改訂第6版―
Ⅲ.神経疾患
26.多発性硬化症,視神経脊髄炎
Multiple sclerosis and neuromyelitis optica spectrum disorder
金子 仁彦
1
KANEKO Kimihiko
1
1東北大学脳神経内科
pp.366-369
発行日 2022年12月23日
Published Date 2022/12/23
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000000576
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1 基本病因,発症機序
多発性硬化症(multiple sclerosis:MS)・視神経脊髄炎スペクトラム障害(neuromyelitis optica spectrum disorder:NMOSD)は,自己免疫学的な機序が想定されている中枢神経系の炎症性疾患である。女性に好発し,MSのわが国での有病率は,欧米のそれより低いものの,患者数の増加が指摘されており,その背景には,疾患概念の普及や,食習慣の欧米化などが指摘されている。その正確な発症機序は明らかではないが,何らかの中枢神経系の抗原に対する免疫反応と考えられており,遺伝的要因(ヒト白血球抗原),環境要因(EBウイルス感染,喫煙,ビタミンD,紫外線,食事)が複雑に関与して発症する多因子疾患であると考えられている。2016年に報告されたわが国の小児脱髄疾患の調査によると,同定された439人の後天性脱髄疾患のうち,多発性硬化症は117人とされる(有病率は10万人小児あたり0.69人)1)。わが国での成人MS患者はおおむね1万人程度と見積もられているため,MS全体からみると,小児例は非常に少ない。また,欧米の報告によると,MSの3~10%は18歳未満で発症するとされ,発症年齢が低いほど,男児の割合が多く,精神症状やけいれん発作を伴うケースも増え,他方,思春期になるほど,成人例と同様に女性優位性がはっきりしてくるとされる2)。さらに,発症から二次進行型への移行は,成人例より時間を要するが,発症時期が低年齢であるため,より若年で二次進行型に移行しやすいとされている3)。
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