特集 小児科医が知っておくべき性の知識
各論
性同一性障害/性別不合 トランスジェンダーの子どもへの二次性徴抑制療法
長谷川 高誠
1,2
,
松本 洋輔
2,3
,
中塚 幹也
2,4
HASEGAWA Kosei
1,2
,
MATSUMOTO Yosuke
2,3
,
NAKATSUKA Mikiya
2,4
1岡山大学病院小児科
2岡山大学ジェンダークリニック
3岡山大学病院ジェンダーセンター(精神神経科)
4岡山大学学術研究院保健学域
pp.1719-1722
発行日 2022年10月1日
Published Date 2022/10/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000000425
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はじめに
性別不合(gender incongruence:GI)の子どもたちは二次性徴開始後,それぞれの生物学的な性の体の変化への耐え難い苦痛〔トランス男性(female to male:FTM)では自身の乳房の発育や月経に対する嫌悪感,トランス女性(male to female:MTF)では自身の体毛の増加,男性的な体格,喉仏の突出,外陰部の思春期発育や変声への嫌悪感〕に日々さらされ,学童期に不登校,引きこもり,非行,自殺企図をひき起こすことがある1)。GI児に対する二次性徴抑制療法(pubertal suppression:PS)はこういった耐え難い身体的変化の進行を抑制し,苦痛を軽減する治療である。また後述するようにGIの診断を確実にするための時間,そして不可逆的な治療となる望む性別の性ホルモンによる治療(ホルモン療法)やその後に行われうる性別適合手術へと進むかどうかを考慮する時間を確保する意味ももつ2)。日本においてGIに対するPSは2011年に大阪医科大学ジェンダークリニックでMTF児に行われたのが最初であると考えられ,このことが発端となった2012年の日本精神神経学会によるガイドライン(ガイドライン)の改訂で掲載された歴史の浅い治療である1)。なお現在GI児に対するPSは保険適用がなく,自費診療で行われていることに注意が必要である。
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