特集 小児科医が知っておくべき性の知識
総論:思春期発来の機序
性同一性障害/性別不合までの歴史
康 純
1
KOH Jun
1
1関西大学保健管理センター
pp.1677-1680
発行日 2022年10月1日
Published Date 2022/10/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000000416
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はじめに
非常に古くから世界中のさまざまな地域で,異性の服装で生活する人や同性との間に性的関係を結ぶ人がいたことは知られている。しかし,キリスト教やイスラム教などでは多様な性を表現する人たちに対して宗教的な罪であるとみなすようになった。さらに,近代国家の成立とともに犯罪として刑罰の対象とする国もあった。19世紀末ごろから同性愛や異性装をする人たちを否定する考え方が変化し,成人同士が合意のうえで,私的な空間で行う同性間の性行為については処罰が廃止された国もあったが,一方でソドミー法とよばれるような法律で処罰の対象として残した国もあった。ドイツでは法学者のウルリクスが同性愛を第三の性と位置づけ,刑法による処罰は不公正であると主張し,また,科学的人道委員会をベルリンに創設したヒルシュフェルトらはアインシュタインやトルストイなどを支援者として男性間の性行為を懲役刑とする刑法の廃止を求めた。しかし,ナチスは同性愛を根絶すべき病気(優生思想)であるとみなしジェノサイドの対象とした。
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