特集 成人患者における小児期発症慢性疾患
成人期における主な小児期発症疾患の病態・管理
血液・悪性腫瘍 血友病
野上 恵嗣
1
NOGAMI Keiji
1
1奈良県立医科大学小児科
pp.1585-1589
発行日 2022年9月1日
Published Date 2022/9/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000000398
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病因・病態・疫学
血友病は幼少期より種々の出血症状を反復するもっとも代表的な先天性凝固障害症である。遺伝形式はX連鎖潜性(劣性)で,通常,男性に発症する。孤発例は約1/3である。ヘテロ接合体の女性は保因者となる。血友病はAおよびBの2病型があり,前者は第Ⅷ因子(FⅧ),後者は第Ⅸ因子(FⅨ)の欠乏・低下症である。FⅧはトロンビンや活性型第Ⅹ因子(FⅩa)により活性型FⅧ(FⅧa)に変換され,出血部位における血小板膜上のリン脂質表面で活性型第Ⅸ因子(FⅨa)によるFⅩ活性化反応を著しく増幅する。したがって,FⅧやFⅨが欠乏するとFⅩ活性化反応が低下し,最終的にトロンビン生成が障害されるために著明な出血傾向をもたらす。血友病の発生頻度は男子5000~10000人に1人である。厚生労働省委託事業「血液凝固異常症全国調査」令和2年度報告書によると1),わが国の血友病生存患者数は血友病Aでは5533人,血友病Bは1205人である。
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