特集 発達障害への多様な支援~あれが知りたい・これも知りたい~
総論:エキスパートからの学び
発達障害支援のこれまでとこれから
杉山 登志郎
1
SUGIYAMA Toshiro
1
1福井大学子どものこころの発達研究センター
pp.1070-1075
発行日 2022年7月1日
Published Date 2022/7/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000000263
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発達障害はどこにいくのか
「発達障害バブル」と言われて久しいが,発達障害の重要性はますます増すばかりである。筆者が発達障害を専門とする精神科医になることを決意した約40年前,発達障害は全くもってメインな対象ではなかった。自閉症は戦後一貫して,児童精神科医にとって主たる対象であったが,それが発達障害と世界で公認(?)されたのは実は1970年代後半で〔それまでは重症の情緒障害(統合失調症の児童版)と考えられていた〕,そもそもわが国では児童精神科医そのものが大変に数が少なく,その主たる関心は不登校などの情緒障害であった。発達障害を専門とする精神科医はわが国において,おそらく両手の指で数えられるほどしか存在せず,筆者は若手のドクターへの勧誘に「発達障害臨床をしますと宣言したとたんに,わが国のトップの専門家になってしまうという情けない底の浅い領域です。だから活躍の機会も多いのでこの領域に来ませんか」と言っていた。しかし今日,発達障害の存在はどんどん重くなっていく。十年一日のごとき精神医学において,一貫して主たる対象であった統合失調症が今日,どんどん外来で減っていき(!)1),統合失調症の研究を主としていた精神病理学者まで,今日では「発達障害の精神病理」に取り組むという盛況ぶりである。
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