特集 地域精神保健・医療の今日的課題
発達障害支援の展望
市川 宏伸
1
1東京都立梅ヶ丘病院
pp.429-432
発行日 2009年6月15日
Published Date 2009/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401101573
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発達障害概念の変遷
従来の発達障害の概念は,医療的に厳密な定義はないが,要約すると「永続的な心身の機能不全があり,発達期に生じ,一生持続する.日常生活に制限があり,常に治療やケアを受ける必要がある」というものであった.精神科的には精神遅滞(知的障害)が代表例であり,他科的には脳性麻痺,てんかん,盲(視覚障害),聾(聴覚障害)などがこれにあたる.これらの障害では,障害は永続的であり,援助を常時必要とする,固定的なイメージが強かったように思われる.
一方,社会的にはこれまでの発達障害の概念だけでは,十分に説明できない人々が増加している.これらの人々は,医療・教育・福祉・労働・司法などさまざまな分野で話題になっている.これらの状況の中で,“発達障害”という概念は「知的障害はほとんどないか,あっても軽微である.発達期に明らかになるが,対応によっては支援が不必要になることもあるし,場合によっては思春期以降に,社会生活が困難になることもある」というものと解釈できる.従来の発達障害の概念に比べると柔軟なイメージがあり,時には思春期以降に表面的には目立たなくなることもある.この概念が導入されると,“障害は変化する場合もある”というニュアンスが含まれて,障害そのもののイメージも変化するように思われる.最近の発達障害概念では,その周縁は明確に分けられないもの(ボーダレス)で連続したもの(スペクトラム)と考えられている.
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