特集 入門! アタッチメントと小児期逆境体験を知る
3つの臨床像
発達性トラウマ症―病態と支援
杉山 登志郎
1
SUGIYAMA Toshiro
1
1福井大学子どものこころの発達研究センター
pp.887-891
発行日 2025年7月1日
Published Date 2025/7/1
DOI https://doi.org/10.24479/pm.0000002471
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発達性トラウマ症とは
発達性トラウマ症(development trauma disorder:DTD)は,2005年van der Kolk1)によって提唱された病名である。DTDの最初の概念を図1に示す。この図は,2014年国際子ども虐待防止学会においてDTDに関する彼自身の講演で示されたもので,筆者は使用許可を得ている。子ども虐待によって,脳に変化が生じ,それがその後,さまざまな病態に展開していく。たとえば,双極性障害と解離性障害は一見なんら関係がないが,実は同じ要因によって生じている。本来のDTDはこのような,子ども虐待によって生じる異型連続性(発達に沿って同一の子どもがいくつもの異なった診断基準を満たすようになる現象)2)を一連の病態として理解するために提示されたものであった。その後,van der KolkはDSM-5(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, 5th ed)への採用を求め,カテゴリー診断に準じたDTDの診断基準を発表し3),いくらか概念の混乱を招くことになった。

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