特集 合併症妊娠の包括的周産期ケア2026
各論
心疾患合併妊娠の取り扱い
澤田 雅美
1
,
神谷 千津子
1
SAWADA Masami
1
,
KAMIYA Chizuko
1
1国立循環器病研究センター産婦人科
pp.690-695
発行日 2026年7月10日
Published Date 2026/7/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000002753
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はじめに
近年の報告では心血管疾患(高血圧性疾患を除く)が全妊娠の約1〜4%に合併し1),わが国の妊産婦死亡の約9%を占めるとされている2)。妊娠に伴う循環動態の変化は既存心疾患の病態を増悪させる重要な要因であり,妊娠中には循環血漿量が約40〜50%,心拍出量(CO)が約30〜50%増加し,安静時の心拍数(HR)が10〜20拍/分上昇することが知られている3〜5)。さらに分娩時には疼痛刺激,出血量の変動,いきみに伴う急激な前負荷・後負荷の変化が加わり,心血管系に大きなストレスがかかる。これらの生理的変化は健常妊婦では適応可能である一方,心疾患を有する妊婦では代償機構が破綻しやすく,心不全の増悪,血行動態の不安定化,不整脈の出現などの重篤な母体合併症を生じるリスクが高まる。心疾患合併妊娠では母体死亡,心不全,致死性不整脈,肺水腫,塞栓症など多岐にわたる有害事象が報告されている6〜8)。また,母体心機能の低下は胎盤血流の減少を介して胎児発育不全(FGR),早産,周産期死亡などと関連することが示されている6)。

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