今月の臨床 症例から学ぶ常位胎盤早期剥離
早剥管理の新しい視点
妊娠中期早剥の取り扱い
中井 祐一郎
1
,
山枡 誠一
1
,
橘 大介
1
,
西原 里香
1
,
本久 智賀
1
,
石河 修
1
,
西尾 順子
2
1大阪市立大学大学院医学研究科生殖発達医学大講座
2泉大津市立病院産婦人科
pp.190-193
発行日 2005年2月10日
Published Date 2005/2/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1409100176
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はじめに
常位胎盤早期剥離は,経過が速くかつ母児双方の生命を脅かすものとして,産科領域では最も恐れられている疾患の1つである.本症の問題点は,剥離に伴う胎盤機能低下により胎児well beingの障害,ひいては胎児死亡をきたすほか,母体失血や凝固因子の消費性低下,さらには組織トロンボプラスチンの流入による汎発性血管内凝固症候群の発生に至ることであり,一般的には妊娠週数に限らず急速遂娩の適応であると考えられている1, 2).一般に,性器出血や子宮収縮の出現,あるいは胎児仮死によって診断されることが多いが,ときには無症状のまま超音波断層法により発見されることもある.
前述のごとく,本症診断時の一般的対応が急速遂娩であることについては異論のないところであるが,本症に続発する病態を制御し得るのならば待機的な管理が可能であるとの考え方も成立する.筆者らは,児の予後が急速遂娩による未熟性により著しく損なわれる場合には,急速遂娩の選択には一考を要するかもしれないと考えている.実際,欧米においても常位胎盤早期剥離の待機療法についてはいくつかの報告がある3~7)が,いうまでもなく確立された方法ではなく,欧米の教科書においても肯定的に捉えられているわけではないのも事実である1).
本稿では,筆者に与えられた課題である妊娠中期の早期剥離の管理について,自験例を報告するとともにその問題点を考察し,読者諸賢のご批判を仰ぎたい.
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