特集 周産期における生命倫理を考える
出生前遺伝学的検査
羊水・絨毛検査とNIPTの適応の違いから考える倫理的課題
山田 崇弘
1
YAMADA Takahiro
1
1北海道大学病院臨床遺伝子診療部
pp.36-41
発行日 2026年1月10日
Published Date 2026/1/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000002558
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はじめに
主に染色体疾患を対象とした出生前遺伝学的検査には,羊水穿刺や絨毛採取といった確定的検査(侵襲的検査)と非侵襲性出生前遺伝学的検査(non-invasive prenatal testing:NIPT)をはじめとした非確定的検査がある。日本産科婦人科学会の「出生前に行われる遺伝学的検査に関する見解」(2023年改訂)1)では前者は診断の確定を目的とし,後者は胎児が特定の染色体疾患などに罹患している可能性を評価することで罹患リスクの推定を行い,対象疾患の診断を確定するための侵襲を伴う検査を実施するか否かを判断する目的で実施される。しかし,非確定的検査に分類されるNIPTは導入当初より,その呼称が海外でnon-invasive prenatal screening(NIPS)とされたこともあり,マススクリーニングとして染色体疾患のある人を排除するような優生思想につながるのではないかとの懸念から生じる批判があった。しかし,わが国では2013年に日本産科婦人科学会の「母体血を用いた新しい出生前遺伝学的検査に関する指針」2)に基づく臨床研究として始まったときから,安易に行われた際にはマススクリーニング化の可能性があることが認識されており,一貫してマススクリーニング化しないという前提のもとに進められ,現在の厚生科学審議会科学技術部会による「NIPT等の出生前検査に関する専門委員会報告書」3)や日本医学会出生前検査認証制度等運営委員会による「NIPT等の出生前検査に関する情報提供及び施設(医療機関・検査分析機関)認証の指針」4)に至るまで,その理念がぶれたことはない。

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