特集 周産期救急システム―初期対応と災害対策
新生児救急発症時の対応 消化器症状(嘔吐,腹満)を呈する新生児救急疾患の鑑別と対応
中山 淳
1
NAKAYAMA Atsushi
1
1日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院小児科
pp.735-738
発行日 2025年6月10日
Published Date 2025/6/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000002187
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はじめに
新生児の胃は成人と比較して縦長の形態をしており,食道胃接合部(噴門)の括約筋が未発達である。このような胃の構造は排気(ゲップ)をするのに有利であるが,排気が出やすいことは乳汁を吐きやすいことを意味する。さらに,靱帯による胃の固定が緩いため,胃の軸捻転が生じやすく,捻転すると嚥下した空気の排気が難しくなり,胃の容量が減少する可能性がある。また,新生児の腸管壁の筋層は未発達であり,蠕動運動が不規則で,全体の協調運動が悪いという特徴がある1)にもかかわらず,新生児期には150~200 mL/kg/日にも及ぶ多くの母乳や人工乳を摂取し,同時に多量の空気を嚥下するため,正常新生児において嘔吐や腹満はしばしばみられる1)。その一方で,これらを主症状とする疾患のなかには緊急手術を要するものや,対応が遅れると致命的となる緊急疾患が含まれるため,そのみきわめが重要である。

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