特集 周産期救急システム―初期対応と災害対策
新生児救急発症時の対応 新生児仮死
川畑 建
1
,
清水 正樹
1
KAWABATA Ken
1
,
SHIMIZU Masaki
1
1埼玉県立小児医療センター新生児科
pp.708-713
発行日 2025年6月10日
Published Date 2025/6/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000002180
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はじめに
新生児仮死は,出産前後における児の呼吸および循環の適応が円滑に行われなかった際に発症する産科・新生児救急疾患である。新生児仮死の診断にはApgarスコアが用いられ,生後1分時点でのスコアが0~3点を重症仮死,4~7点を中等度仮死と分類する1)。ただし,Apgarスコアは心肺蘇生の適応を判断する目安ではないため,出生時の第一呼吸の出現が障害される場合には速やかに呼吸循環を確立させる。新生児仮死は,原因不明のものを除き母体要因と胎児要因に分けられる。表1に出生前後に確認が必要な母体・胎児・新生児情報を提示する。脳の低酸素や虚血により神経症状を伴う場合には,低酸素性虚血性脳症(hypoxic ischemic encephalopathy:HIE)と診断される。新生児仮死はHIE以外にも呼吸・循環障害,腎不全,播種性血管内凝固(disseminated intravascular coagulation:DIC)などを合併し,全身管理が必要となることが少なくない。そのなかでHIEに対する低体温療法(therapeutic hypothermia:TH)は生後6時間以内の導入という時間的制約があるため,突然の仮死出生時にも迅速かつ適切に対応できるよう,平時からの準備が必要である。

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