特集 ちょっと気になる新生児―お母さんの不安に答える
手・足の異常
腕の動き:分娩麻痺を中心に
大村 威夫
1,2
,
杉浦 香織
1
OMURA Takao
1,2
,
SUGIURA Kaori
1
1浜松医科大学整形外科
2浜松医科大学森町地域包括ケア講座
pp.464-467
発行日 2025年4月10日
Published Date 2025/4/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000002114
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はじめに
新生児における腕の動きの異常で,最も重篤な疾患は間違いなく分娩麻痺である。分娩の際に児の肩または頭が産道の狭窄部に捉えられ,牽引などの外力が加わることにより腕神経叢の牽引が生じ上肢麻痺となる。発生頻度は0.5~3/1,000人で1),20~30%の患者に何らかの麻痺が残存すると報告されている2)。経腟分娩,肩甲難産,5,000 gの巨大児がリスク因子とされており,頭位分娩の巨大児では肩幅が頭径を超える傾向があり,分娩の際に頭部の娩出後に肩が産道の狭窄部に引っかかりやすく(肩甲難産),そのときに頸部を側屈させて引き出すために腕神経叢損傷が生じる。頭位分娩と骨盤位分娩の双方で分娩麻痺を生じる可能性があるが,損傷の様態は異なり,臨床像と回復過程にも相違がある。

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