特集 DOHaDと周産期医療
DOHaDの基礎研究・疫学研究
腸内細菌とDoHaD―特に帝王切開出生児の予後と介入について―
伊藤 淳
1
ITO Atsushi
1
1東京大学医学部附属病院小児科
pp.1500-1506
発行日 2024年11月10日
Published Date 2024/11/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000001781
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はじめに
帝王切開という手技が確立してから,妊娠高血圧腎症,常位胎盤早期剝離,胎児機能不全(NRFS)などの母児緊急状況における児の救命率は大幅に上昇した。しかし2005年の統計で,母親が出産で死亡する確率は通常分娩で0.01%なのに対して,帝王切開0.04〜0.06%とおよそ3〜5倍高く,子宮摘出のリスクが4倍,集中治療室に入る確率が2倍であったことが報告された1)ように,周術期の母体のリスクは相対的に高いとされる。帝王切開の件数は2000年から2015年に倍増しているが,帝王切開分娩の比率は0.6〜58.1%と明確な地域差が存在し,50%を超えるところは珍しくない2)。発展途上国のなかには安易に帝王切開が選択される地域がある。世界保健機関(WHO)は,母児の予後を改善させるために,帝王切開の比率は10〜15%を超えないのが望ましいとしている3)が,わが国において帝王切開の比率はおよそ20%といわれている4)。
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