特集 周産期(産科)の手術の工夫―筆者はこうしている
帝王切開術
筋層縫合法:1層縫合と2層縫合
小谷 友美
1
,
牛田 貴文
2
,
今井 健史
1
KOTANI Tomomi
1
,
USHIDA Takafumi
2
,
IMAI Kenji
1
1名古屋大学医学部附属病院総合周産期母子医療センター
2名古屋大学医学部附属病院産科婦人科
pp.1079-1083
発行日 2024年8月10日
Published Date 2024/8/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000001676
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はじめに
帝王切開術(帝切)の本質的な目的は児を安全に胎外へと娩出することである。しかし帝切率が増加し,現在,わが国では約4人に1人(38,086分娩中10,417分娩,27.4%)が帝切で出産する時代へと突入している(令和2(2020)年医療施設(静態・動態)調査(確定数)・病院報告の概況)1)。それに伴い,次の妊娠の予後の向上や出産後の女性の健康に関する議論も活発化している。すなわち,子宮という臓器の機能温存・再建も重要視されるようになってきた。帝切の縫合法を含む術式の詳細は,国内においても,多くのバリエーションが存在する。これは,多くの産婦人科医が各地で試行錯誤し改良を加えてきた努力の証といえるが,残念ながらそれらの努力が確立した知見に至っていないのも事実である。「患者中心の医療」が重視される現在,帝切で出産する女性にとって最適な子宮壁の縫合術は,長期的に良好な予後をもたらすものであり,具体的には子宮破裂や癒着胎盤といった次回妊娠の合併症リスクを低減し,過長月経などの不快な症状を伴う帝王切開瘢痕症(cesarean scar disorder:CSDi)のリスクも低減するものであるべきと考える。また,しばしば緊急手術となるので,技術的な難易度が低く再現性の高い術式の確立が求められている。本稿では,長年にわたり議論されてきた1層縫合か2層縫合のいずれが優れているのかに焦点を当て考察する。
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