特集 「次」につなぐ「周産期医療」―次回妊娠への対策と次世代への影響を考える
周産期からのDOHaD対策―妊娠糖尿病の発症抑制を目指して
福岡 秀興
1
FUKUOKA Hideoki
1
1福島県立医科大学
pp.494-497
発行日 2024年4月10日
Published Date 2024/4/10
DOI https://doi.org/10.24479/peri.0000001521
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はじめに
Developmental origins of health and disease(DOHaD)説は,膨大な疫学調査,動物・細胞レベルでの研究から,糖尿病・本態性高血圧・脂質異常症等の多様な生活習慣病の発症機構解明および発症を予防するうえでの中心学説となりつつある1)。これは,受精時・胎生期・乳幼児期の望ましくない環境が望ましくないエピゲノム修飾を形成し,その一部が変化せず存続していく。出生後,その状態に更なる望ましくない環境が作用して疾病が発症するという考え方である。これら疾病は主に疾患感受性遺伝子が関与して発症すると想像されていたが,必ずしもそうではなく2),生活習慣病の多くは,早産児や胎内で発育が抑制されて出生した(逆に大きく発育して生まれた)児が,出生後にさらに望ましくない環境に曝露されることで発症すると考えられるのである。さらにそのリスクは世代をこえて存続する(世代間伝達)。また,これら疾病リスクをもって生まれた(プログラミングされた)児の疾病リスクを抑制する(リプログラミング)研究が大きく進展していることも注目すべきである。DOHaD研究領域では,分子レベルの疾病発症機序の解明に加えて,その発症を抑制するための妊娠中のケア(含:栄養学:nutri-epigenetics,精神的サポート,生活習慣)や,疾病発症リスクの高い児への介入(リプログラミング),分娩後ハイリスクな母親へのケア方法の研究開発が展開している。なおこの説は,成人病胎児期発症起源説,胎児プログラミング説,代謝メモリー説等の多様な名称が提唱されてきたが,現在ではDOHaD説に統一されてきている。
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