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インスリン発見の地,トロント大学は「インスリン発見100周年シンポジウム」を2021年に開催すべく,早くも準備を開始した.「2021年には糖尿病はどうなっているか?」との討論が始まった.筆者は,「1型糖尿病は再生医療の進歩で,治癒する病気になっている」と述べた.iPS細胞,ES細胞の活用,さらには膵外分泌組織からの内分泌細胞への分化促進技術などの活用により,患者の膵β細胞を再構築することができよう.移植後の拒絶反応も,biomembrane(生体膜)などの進展とその応用により克服できるであろう.準備委員会の他のメンバーも,“promising, probable”と同意してくれた.それまでの間,1型糖尿病患者の血糖コントロールをより良好に保ち,決して血管障害を発症させないことが明確な治療目標になろう.
一方,世界で激増し続ける2型糖尿病はどうなっているであろうか.筆者は「2型糖尿病と診断されるとすぐに治療して,“もとの糖尿病でなかった状況に戻る”のが当たり前,という時代になっている」と強調したが,他の委員全員から,“You are too optimistic!”と言われた.そこで,「日本ではカナダや米国と異なり,全ての人が定期健診などにより早期に糖尿病と診断されている.1年前には正常だったのに,この1年生活にどのような変化があって糖尿病が発症したのか,詳しく聴取し,その原因を除去するように指導することにより,正常血糖応答に復している例が絶えず見られる.5年もあれば実現可能だ」と言った.皆からは“Good luck!”と冷たく言われた.少なくとも日本ではそうなっているように,最前線の若手医師には今こそ全力を尽くしてもらいたい.現実に,2型糖尿病の治療に長い間専念している患者さんの現状を理解すれば,そのことの重要性が理解できるはずである.
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