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頸管熟化のメカニズム
産科医にとって頸管熟化のメカニズムを把握し,頸管熟化を能動的にコントロールすることは,早産予防,または分娩誘発における経腟分娩率の上昇につながる重要な課題である。子宮体部は主に平滑筋細胞で構成されているのに対し,子宮頸部は体部から離れるにつれて平滑筋成分が少なくなり,線維芽細胞,間質細胞およびそれら細胞間に存在する細胞外基質が主体となる1)。細胞外基質は主にコラーゲンで構成されており,コラーゲン同士の架橋によるコラーゲン繊維がプロテオグリカンと結合し,強固な3D構造の土台を形成している2)。さらに,コラーゲン繊維以外ではエラスチン繊維も頸管内に豊富に認められ,頸管の柔軟性を保ち,可逆的な変化を可能にしている3)。熟化頸管の組織学的な特徴として,コラーゲン産生抑制・分解促進,ヒアルロン酸増加,炎症細胞増加が認められる。分娩直前の妊婦では頸管コラーゲンが非妊娠時の30%まで減少する4)。さらに,炎症細胞や間質細胞から産生されるマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)1,2,8,9によりコラーゲン同士の架橋,プロテオグリカンの分解が促進される5)。熟化頸管では炎症誘発性サイトカインのインターロイキン(IL)-1,IL-8がヒアルロン酸産生を惹起する。同時にヒアルロン酸はIL-1,IL-8産生を促進する。ヒアルロン酸はグリコサミノグリカン(AGA)のなかで唯一蛋白と結合せず,プロテオグリカンとして存在しないAGAであり,保水性が高いことが特徴である6)。頸管熟化は上記の特徴的な変化により,コラーゲン繊維の強固な結合が再編成され,結合が疎となる事象と考えられており,再編成を制御する因子が複数報告されている。そのなかには頸管熟化薬として臨床応用されている因子もある。以下に頸管熟化因子とメカニズムを解説する。
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