連載 ABR-深く理解し,正しく判定するために-
聴神経腫瘍とABR
細谷 誠
1
Makoto Hosoya
1
1慶應義塾大学医学部耳鼻咽喉科学教室
キーワード:
ABR
,
聴神経腫瘍
,
eABR
Keyword:
ABR
,
聴神経腫瘍
,
eABR
pp.357-361
発行日 2025年3月1日
Published Date 2025/3/1
DOI https://doi.org/10.24479/ohns.0000001518
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聴神経腫瘍におけるABRの特徴
聴神経腫瘍は第Ⅷ脳神経に発生する良性腫瘍であり,典型的には後迷路性難聴を呈する。聴神経腫瘍はABRの臨床応用上の重要な対象疾患であり,本疾患におけるABR波形の特徴は1970年代にはすでに報告されている1,2)。現在の聴神経腫瘍診断のゴールデンスタンダードであるMRIの普及前にはABRは聴神経腫瘍診断における最も有用な検査の1つであった。聴神経腫瘍症例での教科書的なABR波形は,Ⅰ波を認めるがⅤ波消失,またはⅠ~Ⅴ波間(もしくはⅠ~Ⅲ波間)潜時の延長が特徴的であるとされている2,3)。しかしながら,腫瘍のサイズや局在によらずABR波形の左右差が小さい症例から大きいものまで多彩な波形を呈しうることを知っておくことが重要である(図1)。
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