連載 腎臓学100年史
第1回 腎臓病と尿検査:蛋白尿の今日的意義
斉藤 喬雄
1,2
SAITO Takao
1,2
1特定医療法人社団三光会三光クリニック
2福岡大学名誉教授
pp.719-723
発行日 2025年5月25日
Published Date 2025/5/25
DOI https://doi.org/10.24479/kd.0000001898
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
尿の異常については,すでに2000年以上前にエーゲ海のコス島で活躍したHippocrates(c.460-c.375 BC)が指摘して以来,多くの研究者が,疾患における意義を明らかにしようとしてきた。スイス出身のParacelsus(1493-1541)がその化学的な面に注目し,ライデン大学のFredericus Dekkers(1644-1720)が加熱法により尿蛋白の存在を示した。さらに,ナポリのDomenico Cotugno(1736-1822)が尿蛋白を呈する症例の報告をした後に,ロンドンのRichard Bright(1789-1858)が腎疾患との関係性を明らかにした。彼は蛋白尿を呈する腎臓の形態的変化を示したが,実際にその病理組織学的分類は1914年にドイツのFranz VolhardとTheodor Fahrによってなされた。これがまさに蛋白尿が関わる腎臓学100年史のスタートといってよい1)。表1に,私が考えるこの100年の腎臓病診療の動向を簡単な年表として示したが,そのことを中心に蛋白尿など尿検査の意義を記す。

© tokyo-igakusha.co.jp. All right reserved.