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はじめに:微量元素とは
現在118の元素が地球上に知られており,あらゆる物質,物体はこれらの元素で構成されている。人体もさまざまな元素で構成されている。その組成において,含有量の多い元素である酸素(O),炭素(C),水素(H),窒素(N)を多量元素という。これより少量の元素で最大のものは骨の構成成分であるカルシウム(Ca)およびリン(P)となり,以上で人体の99%を占めている。このCa,P,さらに硫黄(S),カリウム(K),ナトリウム(Na),塩素(Cl),マグネシウム(Mg)は比較的多く生体に含まれており,少量元素と呼ばれ,採血の検査項目でもルーチンで測定される。その一方で,それ以下の含有量の元素,すなわち鉄(Fe)以下のミネラルが微量元素となる。実際はFe,フッ素(F),ケイ素(Si),亜鉛(Zn),マンガン(Mn),銅(Cu),セレン(Se),ヨウ素(I),モリブデン(Mo)となる。微量元素が重要視されている理由の1つは,地球上の土壌から微量元素が減少しているからである。1992年にリオデジャネイロで開かれた地球サミットで提示されたデータでは,世界中の土壌から過去100年間でミネラルの量は減少していることが指摘された。この原因には,おそらく化学肥料の乱用があると思われている。その結果,土壌,そして農作物中の微量元素は減少し,最終結果として人類のミネラルの摂取量は減っており,所要量を満たしていないことが指摘されている。また食事からの摂取とは別に,慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)や透析では,微量元素の欠乏,過剰が起きることが知られている。CKD,血液透析,腹膜透析患者の各微量元素の血中濃度の状況において,多くの微量元素が健常人に比べ排泄障害が原因で上昇している。クロム(Cr),Mo,Si,コバルト(Co),ニッケル(Ni),バナジウム(V),ストロンチウム(Sr),Cd(カドミニウム)は上昇している。その一方で,注意すべきなのは欠乏症となる元素があり,Fe,ZnとSe,Mnがその代表である。
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