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はじめに
わが国において連続携行式腹膜透析(continuous ambulatory peritoneal dialysis:CAPD)は1980年より導入され,1984年健康保険適用となり本格的な普及が始まった。2009年版日本透析医学会「腹膜透析ガイドライン」が作成され,腹膜透析(peritoneal dialysis:PD)療法は慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)ステージG5に対する包括的腎代替療法の初期治療であるとした。わが国における維持透析患者数は増加の一途をたどってきたが,被囊性腹膜硬化症(encapsulating peritoneal sclerosis:EPS)の発症増加の懸念などの理由により,PD患者数は約25年間1万人弱にとどまっていた。しかしながら,世界的にはPD患者数は増加傾向であり,特に中国やメキシコでの患者増加数が著しい。日本と諸外国では,血液透析(hemodialysis:HD)施設へのアクセスや医療経済政策制度の違いなどがあり,一概に比較はできないが,PD医療において,PD液やデバイスは25年前からは飛躍的に進歩している。またPDにおいては,患者数の少なさにより臨床研究が十分に行われていなかったが,近年多数例の臨床研究が報告されるようになり,新しいエビデンスが創出されつつあり,わが国の腹膜透析ガイドラインも2019年に改訂された1,2)。基礎研究では,腹膜中皮細胞障害性の機序や腹膜線維症モデル動物での腹膜障害機序が解明されてきた。これらの基礎・臨床研究の進歩により,現在の被囊性腹膜硬化症(encapsulating peritoneal sclerosis:EPS)への認識は以前のものと異なってきている。2012年改定にてPDとHDの併用療法が診療報酬として認められるようになり,PD患者の約20%が併用療法となっている。しかしながら頻回の診療報酬の改定にもかかわらず,PDの普及率は全透析患者の3%程度にとどまっている。限りある医療財源のなかで透析医療費の増大が問題となっていることから,医療経済的な面から透析医療を評価することが求められている。また自然災害への対応の面からも,さらに超高齢社会を迎えようとしているわが国において,在宅医療であるPD療法は見直される時代になってきたといえるだろう。
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