特集 助産の変遷
分娩の変遷
阿部 達郎
pp.32-39
発行日 1956年7月1日
Published Date 1956/7/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611201084
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太古の妊娠分娩
原始人の間では分娩は他の動物と異る所がなかつた.しかし他の如何なる動物でも,分娩に際し互に助け合うということを聞かぬが,人は未だ医学らしいものすら行われていなかつた大昔から,お産の時に経験あるものが,産婦を助け,相互扶助の形で行われて来たことは間違いないことで,助産を業とする者が現われたのは,比較的近世になつてからのことである.
我々がかなり詳しく知ることの出来る文明の中で最も古いのは今から五千年前,アフリカ大陸の北部に栄えたエジプト文明である.時代は遥か後になり,かつての文明の遺産を継承したクレオパトラの分娩の有様がエジプトの一寺院に絵となつて残されているが(第1図),これを見ると当時の風習を推察することが出来る.それによると先ず,第1に気がつくのは坐産であることで,洋の東西を問わず我々の歴史の大部分は坐産であつて,現今の仰臥産が普及したのは19世紀に入つてからである
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