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特集 COPDの最新の話題
概念の変遷
History of a COPD Concept
永井 厚志
1
Atsushi Nagai
1
1東京女子医科大学
1First Department of Medicine, Tokyo Women's Medical University
pp.993-997
発行日 2012年10月15日
Published Date 2012/10/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404102060
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はじめに
COPD(chronic obstructive pulmonary disease:慢性閉塞性肺疾患)は気流閉塞(閉塞性換気障害)が恒常的にみられる慢性炎症性の呼吸器疾患として捉えられている.肺気腫は病理形態学的な診断名であり,慢性気管支炎は咳痰の持続する症候に根ざした診断名であることから,近年のガイドラインにおけるCOPDの定義ではこれらの疾患名が除かれている.そのために,慢性気管支炎や肺気腫といった病名が消滅したかのような誤解をしている医療従事者がいないわけでもない.しかし,COPDは気流閉塞といった呼吸機能面からのみ捉えられた症候群的疾患概念であり,自ずと疾患名としては限界があることは広く認識されていた.したがって,病態形成には気道や肺胞の病変が複合的に関与していることから,気流閉塞にそれぞれの病変がいかに関わっているかを示す末梢気道病変優位型や肺気腫病変優位型などの表現型分類が浮上してくるのは自然の成り行きであった(図1).しかし,COPDという症候群名の認知度(病名,内容)は国内外を問わず低く,今日では再び慢性気管支炎や肺気腫といった病名を用いて,それらと関連付けながらCOPDを広く理解していくことが,適切な治療を推進するうえで実効性があるともみなされている.すなわち,COPDという慢性閉塞性換気障害症候群に対する気管支拡張療法のみでは患者管理は不十分であり,抗炎症薬の時代に足を踏み入れている今日にあっては,COPDは呼吸生理学的診断名,慢性気管支炎は症候名,肺気腫(症)は病理学的定義を踏まえた疾患名であることを再認識し,それぞれの病態に即した診療が求められこととなる.
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