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はじめに
わが国の疫学データによると,中・壮年者においてすべての人が120/80mmHg未満の血圧であった場合,脳心血管病(cardiovascular disease:CVD)死亡者数が約6割減少するとされている1)。このように,高血圧はCVD死亡の最大のリスク因子である。高血圧がCVDを発症させるメカニズムには,太い動脈における全身の動脈硬化性変化と細い抵抗血管の機能・組織学的障害による血流の減少や血管の機能の破綻が重要な役割を果たしている。よって,高血圧が,CVDと同様に腎動脈をはじめとした腎臓に分布する血管の動脈硬化性変化および細動脈病変を引き起こして,腎機能に悪影響を与えることは当然である。その結果として臨床的に高血圧は,推算糸球体濾過量(estimated glomerular filtration rate:eGFR)低下,慢性腎臓病(chronic kidney disease:CKD)発症,末期腎不全発症などの腎障害を起こすとともに,それらを悪化させる要因となるのである。実際,血圧のレベルが高くなればなるほど末期腎不全に至るリスクが高いことが,国内外の疫学研究から証明されている。さらに,適切な血圧の管理は,腎機能を表す代表値である糸球体濾過量(GFR)の低下速度を改善させるとされている。わが国の疫学研究では,高血圧は糖尿病とともに蛋白尿出現の強いリスクであることが報告されている。一方で,eGFR<60リスクに対しては,高血圧はリスクであるが蛋白尿に比べて弱いものとなっている。つまり,高血圧単独というよりも,糖尿病などとともに蛋白尿が出現するような糸球体障害が生じると,高血圧の腎障害リスクが高まることが考えられている。
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