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特集 糖尿病性腎症研究の最前線
糖尿病性腎症の発症機序
腎病理からみた進展機序
Mechanism of disease progression from the viewpoint of renal pathology
林 憲史
1
,
古市 賢吾
1
HAYASHI Norifumi
1
,
FURUICHI Kengo
1
1金沢医科大学医学部腎臓内科学
キーワード:
糖尿病性腎症
,
糸球体病変
,
尿細管・間質病変
,
血管病変
Keyword:
糖尿病性腎症
,
糸球体病変
,
尿細管・間質病変
,
血管病変
pp.154-158
発行日 2024年2月25日
Published Date 2024/2/25
DOI https://doi.org/10.24479/kd.0000001186
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はじめに
糖尿病患者の約3割から4割が糖尿病性腎症(diabetic nephropathy:DN)を発症する。高血糖に伴う終末糖化産物(advanced glycation end-products:AGEs)の増加,糸球体過剰濾過などの腎血行動態の変化,合併する高血圧症,高脂血症,あるいは肥満に伴いDNは進行していく。DNの進行に伴い,腎臓の糸球体,尿細管・間質,および血管といったそれぞれの構成要素に構造的変化が生じる。初期にみられる変化として,糸球体基底膜と尿細管基底膜の肥厚が知られている。そのほかの糸球体の変化として,血管内皮細胞の有窓構造の喪失,メサンギウム基質の増生,足突起の消失を伴うポドサイトの脱落などが生じる。進行したDNでは分節性のメサンギウム融解を認めるが,これは同様にみられる結節性病変の形成に関連している可能性も推測されている。また,DNの特徴として,血管病変も重要である。血管内皮細胞障害に伴う輸出・輸入の両細動脈の硝子様変性や,糸球体係蹄における血漿成分の滲出により生じるfibrin capの形成もDNにみられる病変として知られている。同様の血漿成分の滲出により生じる病変は,ボウマン囊(capsular drop)や近位尿細管でも認められる。腎症後期になると間質線維化や糸球体の分節性および全節性硬化が目立つようになる。
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