Japanese
English
特集 十二指腸・小腸疾患アトラス
Ⅱ.炎症性疾患
感染症:寄生虫,原虫性
糞線虫症
Strongyloidiasis
田中 啓仁
1
,
上村 修司
1
,
佐々木 文郷
1
,
井戸 章雄
1
Akihito Tanaka
1
,
Shuji Kanmura
1
,
Fumisato Sasaki
1
,
Akio Ido
1
1鹿児島大学大学院消化器疾患・生活習慣病学
キーワード:
糞線虫症
,
糞便塗抹顕微鏡検査
,
普通寒天平板培地
Keyword:
糞線虫症
,
糞便塗抹顕微鏡検査
,
普通寒天平板培地
pp.576-577
発行日 2024年4月25日
Published Date 2024/4/25
DOI https://doi.org/10.24479/endo.0000001368
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 参考文献 Reference
疾患の概念
糞線虫症(Strongyloidiasis)は,糞線虫(Strongyloides stercoralis)が,おもに十二指腸および上部空腸に寄生することにより生じる消化管寄生虫感染症である。本虫は,亜熱帯地域に属する沖縄と奄美を含む南西諸島が浸淫地であるが,人の移動によると考えられる高浸淫地域以外での報告例もある。また,患者のほとんどが1960年以前の出生者である1)。ヒトへは,汚染された土壌中に存在する幼虫が足趾などから経皮的に侵入し,血流やリンパ流により肺に到達し,肺胞内へ脱出後,気道を逆行し嚥下により消化管内に入るといわれている。虫体は十二指腸・小腸で成虫となり産卵,孵化した非感染型のラブジチス幼虫となる。便とともに体外へ排出されるが,消化管内で変化した一部のフィラリア型幼虫が,大腸粘膜や肛門周囲の皮膚から体内に侵入し,持続感染する(自家感染)。おおむね無症状または軽症で問題となることはないが,宿主の免疫能が低下した場合には下痢,浮腫,体重減少,血便を認めることもある。さらに重症化すると麻痺性イレウスや吸収不良症候群を呈し,腸管から虫体とともに腸内細菌が血中へ移行し,細菌性肺炎・髄膜炎・敗血症を生じる播種性糞線虫症となり死に至ることもある(過剰感染症候群)。本虫体の浸淫地は,成人T細胞性白血病の原因であるヒトT細胞白血病ウイルス1型(HTLV-1)の浸淫地とも共通しており,HTLV-1感染者は免疫異常により,非感染者に比し糞線虫症の罹患率や重症化率が高く,駆虫率も低いといわれている。
© tokyo-igakusha.co.jp. All right reserved.