今月の表紙 帰ってきた寄生虫シリーズ・15
糞線虫
藤田 紘一郎
1
1東京医科歯科大学大学院国際環境寄生虫病学
pp.232-233
発行日 2001年3月15日
Published Date 2001/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542904700
- 有料閲覧
- 文献概要
糞線虫(Strongyloides stercoralis)は熱帯・亜熱帯地域に広く分布し,2億人の感染者がいると推定されている.日本では沖縄を中心に南西諸島に広く分布している.寄生世代の雌成虫は,ヒトの小腸上部粘膜内に寄生して単為生殖によって産卵する.虫卵は粘膜内で孵化し,ラブジチス型(R型)幼虫となって腸管腔内に現れ,糞便中に排泄される.R型幼虫には感染力がなく,外界で発育してフィラリア型(F型)幼虫となってはじめてヒトに経皮感染する.また,一部のR型幼虫は雌雄の成虫となり外界で自由生活を行い,交尾後産卵し,孵化したR型幼虫はF型幼虫に発育してヒトに経皮感染する.
経皮感染したF型幼虫は血流によって肺に運ばれ,発育後気管をさかのぼり,咽頭,食道を経て小腸上部に寄生する.便秘や発熱時,免疫抑制時には幼虫が腸管下降時に発育してF型幼虫となり,大腸粘膜から組織に侵入して肺に運ばれ,自家感染が起こる.
Copyright © 2001, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.