Japanese
English
特集 十二指腸・小腸疾患アトラス
Ⅱ.炎症性疾患
感染症:細菌性
Whipple病
Whipple’s disease
池田 敦史
1
,
小野 洋嗣
2
,
田中 秀憲
1
,
木崎 智彦
3
Atsushi Ikeda
1
,
Hiroshi Ono
2
,
Hidenori Tanaka
1
,
Tomohiko Kizaki
3
1三田市民病院消化器内科
2淀川キリスト教病院消化器内科
3三田市民病院病理診断科
キーワード:
Whipple病
,
白色絨毛
,
泡沫状マクロファージ
Keyword:
Whipple病
,
白色絨毛
,
泡沫状マクロファージ
pp.566-567
発行日 2024年4月25日
Published Date 2024/4/25
DOI https://doi.org/10.24479/endo.0000001363
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 参考文献 Reference
疾患の概要
Whipple病は,グラム陽性桿菌であるTropheryma Whippleiの感染により生じる全身性の慢性細菌性感染症であり,関節痛,消化器症状,体重減少などの多彩な臨床症状を呈する疾患である。Tropheryma Whippleiは土壌や海水などの自然環境下に存在する菌であり,感染経路は汚染された飲料水や土壌などからの経口感染が考えられている1)。本疾患は欧米の白人中年男性に多く,本邦からの報告は十数例と稀である。本邦においても平均発症年齢は50歳台前半で,男性に多く欧米と同様の傾向がみられた2)。典型例では十二指腸や空腸から感染が起こり,ゆっくりと下痢,発熱,腹痛,吸収不良を伴う体重減少がみられる。さらに感染が広がり,関節・神経・肺・皮膚・眼などに所見を認めることがある。このように,本症の臨床症状は多彩で非特異的であり,症状のみから本症を想起するのは困難なため,罹病期間は数カ月から数年に及ぶことが多い。内視鏡でみられる十二指腸から小腸のびまん性白色絨毛が特徴的であり,最近の本邦における症例のほとんどが,上部消化管内視鏡検査における十二指腸の白色絨毛を契機に診断されており,非常に有用な所見と考えられる2)。治療はCTRX 2g/日を点滴静注で2週間投与したあとに,維持療法として最低でも1年以上のST合剤4錠/日の内服が推奨されている1)。治療後に30%程度再燃があり,長期間経過してから再燃した報告もあるため,生涯にわたるフォローが必要である。
© tokyo-igakusha.co.jp. All right reserved.