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プロトンポンプ阻害薬(PPI)長期投与によって胃粘膜には種々の変化が起こるが、本稿では上皮の変化に注目し、その代表的変化を紹介する。PPI投与によって上皮に起こる初期変化・基本的変化は、壁細胞の腫大・変性である。そしてガストリン値の上昇が起こるが、それが幹細胞を直接/間接に刺激し壁細胞の増加・過形成が出現する(ここでPCP、PCV、oxyntic gland dilatationなど)。また、副細胞の過形成をきたし、さらには一時的であろうが主細胞の過形成をももたらす。しかし、多くの場合、壁細胞・副細胞の増加に伴って主細胞域は減少し、主細胞が時に全く認められない状態も起こる(幽門腺化生)。一方、腺窩上皮過形成は粘膜表層に頻繁に認められるが、副細胞の下降に伴って、異所性腺窩上皮が粘膜の中~深層にも出現する。さらに腺頸部や腺体部においては、腺の多分芽、腺密度の増加、腺の変性・消滅や嚢胞状腺管拡張などが引き続いて起こる。これらの変化は最終的に粘膜に不規則な凸凹を引き起こし、肉眼的には粘膜表面に種々の程度・色調の顆粒状変化(敷石状胃炎)を生じる。軽度の腺窩上皮過形成を伴えば、いわゆる「多発性白色隆起」になる。肉眼的に認識できるような大きな隆起性病変のなかでは、胃底腺ポリープ(FGP)は、PPI関連病変の代表といえる。上述の種々の変化を含む胃底腺の増加に加えて、多かれ少なかれ嚢胞状腺管拡張を含む。嚢胞状腺管拡張の目立つタイプを、筆者加藤はcystic FGPと呼んでいる。Oxyntic gland adenomaは、多くの場合Muc 6陽性(陰性のものも存在)の、round and tubularまたはanastomosing glandの増生巣である。増生は多くは粘膜中層から深層に(時に粘膜下組織浅層にも)広がる。増殖活性は一般に低く(Ki-67 index<5%)、その生物学的悪性度は低いと思われる。この病変も病変内外に種々の程度のPPI関連変化を伴い、PPI関連の腫瘍と考えられる。PPI関連病変の観察においては、壁細胞の変化だけでなくMuc 6陽性細胞の動き(分化方向)にも注意する必要がある。
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