特集 Muse細胞 -現状と将来展望-
5.大動脈瘤・血管病変におけるMuse細胞を用いた治療戦略
細山勝寛
1
,
齋木佳克
2
Katsuhiro Hosoyama
1
,
Yoshikatsu Saiki
2
1東北大学大学院医学系研究科 心臓血管外科学分野 助教
2東北大学大学院医学系研究科 心臓血管外科学分野 教授
pp.215-225
発行日 2019年1月30日
Published Date 2019/1/30
DOI https://doi.org/10.20837/5201902215
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大動脈瘤は大動脈の進行性拡大として定義され,その拡大率は経時的な破裂リスクと相関する。慢性炎症や酸化ストレス,動脈硬化などを契機として炎症性細胞浸潤とmatrix metalloproteinaseなどのサイトカインの活性化が生じ,細胞外基質の破壊や血管平滑筋細胞,内皮細胞の脱落・減少の結果,血管壁の構造的強度が失われる。早期大動脈瘤に対する非外科的介入などを目的として数多くの細胞治療が試みられ,疾患モデル実験において抗炎症作用を主としたtrophic効果による拡大抑制効果などが示されているが,大動脈組織再生による効率的な治療効果という点では未だ多くの課題を残している。我々は,成人ヒト間葉系組織に存在する内在性多能性幹細胞であるMuse細胞(Multilineage-differentiating stress enduring cells)を用いて,その自発的組織分化能を介したより効果的な大動脈瘤治療の可能性を示した。本稿では,他の細胞治療研究との比較を含めて,大動脈瘤治療におけるMuse細胞の現状と展望を論じる。