TOPICS
脳梗塞に対するMuse細胞治療
新妻 邦泰
1,2,3
1東北大学大学院医工学研究科 神経外科先端治療開発学分野
2東北大学大学院医学系研究科 神経外科先端治療開発学分野
3東北大学大学院医学系研究科 神経外科学分野
キーワード:
脳梗塞
,
幹細胞
,
Muse細胞
,
再生医療
Keyword:
脳梗塞
,
幹細胞
,
Muse細胞
,
再生医療
pp.556-560
発行日 2024年6月15日
Published Date 2024/6/15
DOI https://doi.org/10.32118/cr033060556
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
はじめに
哺乳類の中枢神経系は脆弱であり,かつ再生能も極めて限定的である.脳梗塞をはじめとする種々の傷害後に脳室下帯や海馬の歯状回を中心として内因性の神経再生がみられるものの 1, 2),現状では,単純な内因性の再生では十分な機能回復が得られないと考えられる.結果として,重い後遺障害を残すことも多く,中枢神経疾患は社会的に大きな問題となっている.近年は,傷害されたり失われたりした体の組織を元に戻したり補ったりするような,再生医療に注目が集まっており,中枢神経への応用も期待されている.
再生医療の中にもいろいろな種類があり,たとえば,1)どんなものにでもなれるような幹細胞を用いて人工物等も利用しながら人工的に臓器・組織をつくる組織工学,2)体の再生能力を活性化したり,人工的な「神経が伸びるための足場材料」等を埋め込んだりして,その中に神経を再生させる再生誘導材料,そして3)幹細胞自体,あるいは幹細胞を少し加工したもの等を直接体内に入れることによって,傷害された臓器を修復しようとする幹細胞治療等が挙げられる.それぞれの方法には利点や欠点があるが,幹細胞治療は,人工物を使用せずに体を治療できる可能性があり,最も自然な修復が得られると考えられる.
本稿では,難治性の中枢神経疾患,その中でも患者数が多く有効な治療手段も限られている脳梗塞を対象としたMuse(Multilineage-differentiating stress-enduring)細胞による幹細胞治療の取り組みを紹介する.
Copyright© 2024 Ishiyaku Pub,Inc. All rights reserved.