特集 汗とアレルギー
III.ヒスタミンの発汗に与える影響
室田浩之
1
,
松井佐起
2
,
片山一朗
3
Hiroyuki Murota
1
,
Saki Matsui
2
,
Ichiro Katayama
3
1大阪大学大学院医学系研究科情報統合医学講座皮膚科学 准教授
2大阪大学大学院医学系研究科情報統合医学講座皮膚科学
3大阪大学大学院医学系研究科情報統合医学講座皮膚科学 教授
pp.386-393
発行日 2015年2月15日
Published Date 2015/2/15
DOI https://doi.org/10.20837/3201503032
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
- 参考文献
発汗過多あるいは欠乏に伴う様々な症状は患者の生活の質を著しく低下させる。発汗活動を制御できる,低侵襲かつ汎用性の高い方法が確立されれば汗の関与する多くの疾患の治療に応用できるだろう。そのためには汗腺の制御機能,発汗活動を理解した上で,汗腺機能を支配する中枢・末梢神経,汗腺をとりかこむ微小環境,そして生活習慣などを含む網羅的な発汗制御因子の探索を行う必要がある。私たちはアトピー性皮膚炎が乏汗になっているメカニズムに着目し,ヒスタミンがアセチルコリン性発汗を抑制することを確認した。アセチルコリンは汗腺分泌細胞内でglycogen synthesis kinase 3β(GSK3β)をリン酸化することで自覚できる発汗を促す。ヒスタミンはGSK3βのリン酸化を抑制することで汗腺分泌細胞から汗管への汗の移動を阻害する。汗腺機能を制御する新たな因子の発見が発汗異常を伴う疾患の治療に貢献すると期待される。