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特集 忘れてはいけない人獣共通感染症
10.エキノコックス症
Echinococcosis
奥祐三郎
1
Oku Yuzaburo
1
1鳥取大学農学部共同獣医学科 教授
キーワード:
多包条虫
,
人獣共通寄生虫
,
北海道
,
野生動物
Keyword:
多包条虫
,
人獣共通寄生虫
,
北海道
,
野生動物
pp.92-99
発行日 2017年2月25日
Published Date 2017/2/25
DOI https://doi.org/10.20837/2201703092
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わが国では回虫症や鉤虫症などの人の寄生虫症は戦後激減してきた。この激減した寄生虫はおもに人を宿主とする寄生虫であり,野生動物を主たる宿主とし,人に偶発的に感染するような寄生虫症に関しては,多くの場合,減少していない。北海道で問題となっている多包条虫はこの代表格で,北海道における本寄生虫の分布地域が拡大し,近年では本州への定着も危惧されている1)。寄生性蠕虫類のほとんどの種は宿主に対して病原性をあまり示さないが,多包条虫の幼虫は無性増殖し,腫瘍細胞のように周辺臓器にも浸潤し,高い病原性を発揮することが特徴である。北海道では終宿主動物種・中間宿主動物種とも多数生息し,野生動物間で活発に多包条虫症が伝播している2)。近縁種である単包条虫の全世界の患者数は200万~300万人と推定され,世界的には多包条虫より重要である。日本国内では1999~2014年に計24名報告されているが,これらはすべて輸入例であり3),国内での感染は起こらないと考えられるため,単包条虫の詳細は他書に譲ることとする。