症例
肝エキノコックス症(多包条虫)の1例
片岡 留那
1
,
小嶋 馨
1東京大学医学部附属病院 放射線科
キーワード:
過ヨウ素酸シッフ反応
,
MRI
,
病歴聴取
,
肝包虫症
,
旅行
,
海外在住日本人
,
多包条虫
,
北海道
,
ボリビア
,
輸入感染症
,
腹部CT
Keyword:
Bolivia
,
Echinococcosis, Hepatic
,
Medical History Taking
,
Magnetic Resonance Imaging
,
Periodic Acid-Schiff Reaction
,
Travel
,
Echinococcus multilocularis
pp.571-574
発行日 2017年4月10日
Published Date 2017/4/10
DOI https://doi.org/10.18888/J01565.2017248431
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
症例は50歳代女性で、36歳時に腹痛を訴えて入院し、単純性肝嚢胞と診断された。以後無症状であったため、放置した。右季肋部痛が出現し、1時間ほどでおさまったが、違和感が続くため受診した。腹部エコーでは、肝左葉に多房性嚢胞性病変を認めた。CTでは、左葉に限局する境界明瞭な多房性嚢胞性腫瘤を認め、隔壁を主体に多数の石灰化を伴った。MRIでは、境界明瞭な多房性嚢胞性腫瘤で、T2強調像で軽度高信号〜高信号の不均一信号、T1強調像では概ね均一な低信号を呈し、拡散強調像では一部拡散制限を伴った。病歴聴取で、20歳ぐらいまでボリビアで生まれ育ち、北海道に旅行歴があった。追加検査で、ELISA法エキノコックス抗体陽性、ウエスタンブロット法で単包条虫、多包条虫ともに陽性であった。肝S4に4.5cmまでの多数の嚢胞が癒合する多房性嚢胞性病変を認め、嚢胞内に泥状、一部ゼリー状の内容物を認めた。嚢胞性病変の壁は壊死に陥った厚い線維性組織とその外側の炎症性肉芽組織からなり、内側はエシンに淡染する厚いクチクラ層が裏打ちしていた。ごく少数の原頭節を認めた。門脈は肝静脈、胆管への浸潤は認めなかった。断端は陰性であった。
Copyright © 2017, KANEHARA SHUPPAN Co.LTD. All rights reserved.