講座 臨床から公衆衛生へ—感染症シリーズ・3
北海道のエキノコックス症—疫学とその対策
兵藤 矩夫
1
1北海道立衛生研究所
pp.890-895
発行日 1984年12月15日
Published Date 1984/12/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401206971
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■はじめに
北海道では昭和12年,小樽市に住む一婦人が多包虫症と診断されたのが最初で,その後次々と患者が見出され,そのいずれもが礼文島の在住者または出身者であったことから,当研究所の安保,飯田,市川らは昭和25年9月以来3回にわたり現地調査を行い,同島にはなお10数名の肝腫大を伴う患者の存在すること,それらの患者のいずれもが多包虫症であることを明らかにした.一方,昭和40年,根室市を含む道東地域で本症の患者が発見され,特に根室市に出生,この地で育った7歳の少女が肝腫瘤の手術を受け,組織学的に本症と決定されたことから,根室市内に感染源の存在することが確実視され,礼文島とは別に道東地域(根釧地域)にも本症の流行のあることが判明した.今日までの本道の本症の患者数は礼文島131名,根釧地域71名,その他18名,合計220名となっている.最近礼文島や根釧地域の居住者または出身者が,本州各地に転居後に発病し,その地の医療機関から当研究所に血清反応検査の依頼が時々あり,中には紛れもなく本症と思われる患者も1〜2に止まらない.この機会に北海道のエキノコックス症を紹介し,ご意見や,ご鞭撻を頂きたいと考えている.
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