特集 人と動物の共通感染症・2 BSEを中心に
エキノコックス症の流行―感染源対策は急務
神谷 正男
1
1酪農学園大学環境システム学部
pp.874-877
発行日 2004年11月1日
Published Date 2004/11/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401100501
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エキノコックスは人体内でその幼虫が無性的に肝臓などで増殖し,放置すれば90%以上が死亡する深刻な病気をもたらす動物由来の寄生虫である.北海道では2004年上半期だけで20名の患者が報告され,そのうち12名が都市部,札幌から報告されている.感染した飼い犬が本州へ移送された例も明らかになってきた.2004年3月「ムツゴロウ動物王国」が東京都へ移転する際,動物とともにエキノコックスが本州へ伝播することを危惧した自治体(あきる野市)の呼びかけで対策委員会(委員長:吉川泰弘東大教授)が設置され(2004年3月15日),東京都獣医師会等の専門家が協力して,検疫などリスク・コミュニケーションが住民参加のもとに実施された.厳しい条件を克服して動物の移送がこのほど完了した.
感染症法が2003年11月に改正され,これまで,ヒトのエキノコックス症診断がなされた場合,届出が義務づけられていたが,感染源についての規定はなかった.今回の改正で,2004年10月,世界に先駆けて獣医師の責務を明確にした動物由来感染症対策「エキノコックス症:犬の届け出」他が施行されることとなった.
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