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特集 国際的に脅威となる感染症
1.西アフリカにおけるエボラウイルス病大規模流行と今後の課題
Large-scale unexpected Ebola virus disease outbreak in western Africa:what we have learned and what we should do?
西條政幸
1
Saijo Masayuki
1
1国立感染症研究所ウイルス第一部 部長
キーワード:
エボラウイルス
,
エボラウイルス症
,
西アフリカ
,
大規模流行
,
ウイルス性出血熱
Keyword:
エボラウイルス
,
エボラウイルス症
,
西アフリカ
,
大規模流行
,
ウイルス性出血熱
pp.25-30
発行日 2017年1月25日
Published Date 2017/1/25
DOI https://doi.org/10.20837/2201702025
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1976年にコンゴ民主共和国(旧・ザイール)と南スーダン(旧・スーダン南部)で同時期に独立して発生した致命率の高い感染性疾患は,その流行時にそれぞれ新規ウイルス:ザイールエボラウイルスとスーダンエボラウイルスが病原ウイルスとして分離された。その後もサハラ砂漠以南の熱帯地域でエボラウイルスによる感染症(エボラウイルス病〔Ebolavirus disease:EVD〕)の流行がくり返し発生している。しかし,2013年12月から西アフリカで発生したEVD大規模流行発生までは,おもにアフリカ中央部での流行で,その流行規模は患者数が最大で300~400人であった。しかし,2016年6月10日の世界保健機関(WHO)の発表によると,2013年12月からはじまった西アフリカでのEVD流行では疑い例を含め,患者数は28,616人に上り,そのうち11,310人が死亡したとされる〈http://apps.who.int/iris/bitstream/10665/208883/1/ebolasitrep_10Jun2016_eng.pdf?ua=1〉。この大規模EVD流行を経験して多くの新規知見が得られている。たとえば,西アフリカにもザイールエボラウイルスが存在していたこと,条件さえ整えばこのような大規模流行に発展するリスクがあること,性行為を介して感染する事例があること,比較的長期にわたって体内にエボラウイルスが存在すること等々である。今後もEVD流行は継続して発生する。これらの知見や経験を生かしてEVD流行規模を最小限にし,死亡する患者を減らすための対策を講じておくことが重要である。