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特集 ヒトの健康・疾患と腸内細菌の関わり
8.ピロリ菌感染と胃内常在細菌叢-16SリボソームRNA遺伝子(16SリボソームDNA)解析データを含めて-
Helicobacter pylori infection and gastric indigenous microbiota-Introduction of recent reports including research data of 16S ribosomal gene(16S rDNA)analysis-
神谷茂
1
,
大﨑敬子
2
Kamiya Shigeru
1
,
Osaki Takako
2
1杏林大学医学部感染症学 教授
2杏林大学医学部感染症学 准教授
キーワード:
Helicobacter pylori
,
Microbiota
,
16S rRNA
Keyword:
Helicobacter pylori
,
Microbiota
,
16S rRNA
pp.80-89
発行日 2016年1月25日
Published Date 2016/1/25
DOI https://doi.org/10.20837/2201602080
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強酸下の胃粘膜にも常在細菌叢が棲みつき,Firmicutes,Bacteroidetes,Actinobacteria,Proteobacteria,Fusobacteriaの5門がこの順で優勢を示す。優勢菌属として,Streptococcus,Prevotella,Neisseria,Haemophillus,Porphyromonasなどがあげられる。Helicobacter pyloriの慢性感染は胃内常在細菌叢の構成に有意な変化を及ぼさないことが報告されているが,Actinobacteria,Proteobacteria門の増加および,Firmicutes, Bacteroidetes門の減少についても報告されている。INS-GAS(インスリン-ガストリン遺伝子トランスジェニック)雄マウスでは,他種細菌とH. pyloriの重複感染が腫瘍性病変を効率的に誘導する。胃がん発症に関与する胃内細菌叢として,Streptococcus,Lactobacillus,Veillonellaなどが指摘されている。また,胃内細菌叢の多様性については,慢性胃炎,腸上皮化生,胃がんの順で低下することが報告されている。H. pylori感染と胃内細菌叢との相互作用が解明されることにより,今後,H. pyloriの病態発現機序などについての新知見が得られることが期待される。