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リボソームはRNAとタンパク質からなる超分子複合体であり,mRNAにコードされた遺伝情報をタンパク質のアミノ酸の配列へと変換する,いわばタンパク質合成装置である。バクテリアのリボソームは沈降係数70S,分子量230万Daの巨大な複合体であり,30Sの小サブユニットと50Sの大サブユニットから構成される。いずれのサブユニットもRNAとタンパク質の複合体(リボヌクレオプロテイン;RNP)である。2000年からX線結晶構造解析によって,バクテリアおよびアーキアのリボソームの精密な立体構造が解かれ,リボソームの構造機能相関の研究が大きく進展した1)。この成果に対してノーベル化学賞(2009年)が与えられたことは記憶に新しい。また,2011年には真核生物リボソームの結晶構造が解かれ2),ヒトを含めた真核生物の翻訳制御機構の理解が大きく進展することが期待されている。
リボソームの構造解析がもたらした最も特筆すべき成果は,リボソームの中心骨格がrRNAによって占められているという事実である。30SサブユニットはmRNAのコドンを精確に解読する役割を担うが,暗号解読中心は16S rRNAの進化的に保存された塩基が構成しており,コドン-アンチコドン対合をrRNAがどのように認識するかの分子メカニズムが解き明かされている。また,50Sサブユニットはペプチド転移反応を触媒するが,その活性中心(peptidyl transferase center)も完全に23S rRNAで構成されていることが判明している。遺伝情報の解読とペプチド転移反応という,リボソームが担う二つの最も根本的な機能が,rRNAによって担われているという事実から,リボソームは構造的かつ機能的にもRNAを中心としたマシナリーであるといえる。
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