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●真核生物のリボソーム生合成過程の解明
リボソームはタンパク質合成を担う細胞小器官であり,増殖や環境への適応といった基本的な細胞活動を制御する役割を果たしている。真核生物の細胞質リボソームは80Sという沈降係数を持つ巨大な複合体で,酵母では約50種類のリボソームタンパク質と3種類(25S,5.8S,5S)のリボソームRNA(rRNA)を構成成分とする大サブユニット(60S)および約30種類のリボソームタンパク質と18S rRNAを構成成分とする小サブユニット(40S)からなる。初期の真核生物リボソーム生合成過程の研究は,酵母を対象にした遺伝学的解析およびプロテオミクスの手法を用いた機能性タンパク質複合体のスナップショット解析により精力的に進められた1)。その結果,多数のトランス作用因子[200種類を超えるタンパク質および約75種類のsmall nucleolar RNA(snoRNA)]が関与する同過程の全容が明らかとなった。
酵母リボソーム生合成の開始時には,核小体におけるRNAポリメラーゼⅠによるrDNAからの35SプレrRNAの転写に共役して,C/Dボックス型snoRNAと約30種類のタンパク質からなるSSUプロセソソーム(small subunit processome),およびその他の40Sサブユニット前駆体プロセッシング因子が会合することでプレ90S複合体が形成される。以降の過程で形成される様々な生合成前駆体の働きにより,35SプレrRNAが修飾(2'-O-リボースメチル化,シュードウリジル化)およびプロセッシングを受け,成熟rRNAが生成する。プレ90S複合体中ではまず,40Sサブユニットの生合成の初期段階およびSSUプロセソソームによる40Sサブユニット前駆体(プレ40S)の切断が進行し,その結果,60Sサブユニット前駆体(プレ60S)が形成される。プレ40Sおよびプレ60Sは,35SプレrRNAの切断により生じた20Sおよび27SプレrRNAをそれぞれ含む。また,プレ60Sには独立した遺伝子からRNAポリメラーゼⅢによって転写された5S rRNA前駆体が取り込まれる。その後,両サブユニットは独立した過程を経て成熟していく。
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