Japanese
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特集 わが国でも問題のベクター媒介性感染症
9.極東地域におけるつつが虫病の現状と将来的課題
The present status and future problem of the scrub typhus, tsutsugamushi disease, in the Far East area
安藤秀二
1
Ando Shuji
1
1国立感染症研究所ウイルス第一部第五室 室長
キーワード:
Orientia tsutsugamushi
,
つつが虫病
,
ツツガムシ
,
輸入感染症
,
アジア-太平洋地域
Keyword:
Orientia tsutsugamushi
,
つつが虫病
,
ツツガムシ
,
輸入感染症
,
アジア-太平洋地域
pp.97-105
発行日 2014年1月25日
Published Date 2014/1/25
DOI https://doi.org/10.20837/2201402097
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リケッチア科の一種Orientia tsutsugamushiによる急性熱性疾患であるつつが虫病(scrub typhus, tsutsugamushi disease)はアジア-太平洋地域に広く分布し,特に近年,中国,台湾,韓国を含む極東地域において多数の患者が報告されている。わが国においては年間400~500名の患者が発生しており,韓国,中国では2000年代に入り急速に患者数が増加している。この増加には環境要因が関係しているとの指摘があるものの明らかでなく,現時点では各国の医療体制の改善とともに,医療関係者の認識の向上,より効果的な診断体制・報告体制の構築によるところが大きいと考えられている。つつが虫病はわが国に限らず海外に広く患者が増加している無視できない疾患であるものの,輸入感染症としての医療現場の認識は必ずしも高くない。国,地域によって,ベクターのツツガムシの種類と生態,保有する病原体の型が複雑に組み合わさり,発生時期も異なる。発生地域の十分な情報を有することが輸入感染症としてのつつが虫病への対応を可能とするが,国内実態もいま改めて再確認し,他の国々が進めているように,診断体制の向上維持,報告システムの改善とともに啓発活動の継続を十分に行い,各国との連携も必要である。