今月の表紙 臨床微生物検査・2
バンコマイシン耐性腸球菌
光武 耕太郎
1
Koutaro MITSUTAKE
1
1埼玉医科大学国際医療センター感染対策室
pp.128-130
発行日 2008年2月15日
Published Date 2008/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1542101538
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バンコマイシン耐性腸球菌(vancomycin-resistant enterococci:VRE)は抗MRSA薬であるバンコマイシンに耐性を示す腸球菌である.腸球菌自体はヒトの腸管や陰部に常在しており,便や尿,喀痰などから日常的に検出される.VRE感染症は感染症法で5類に分類され,全数把握の対象疾患となっており2006年の報告数は(発症者)80件程度である.国内での臨床材料からのVREの分離頻度は高くないと推定されるが,米国ではICUから分離される腸球菌のうちVREが30%程度と高頻度である.また,英国では2004~2005年のサーベイランス報告では,VRE菌血症患者数は年間700件を超える.VREは,本来病原性は低いものの血液悪性疾患患者など免疫の極度に低下した患者では敗血症などを起こし,致命率は20%以上にもなる1,2).
VREにはいくつかのクラスがあるが,臨床的に問題となるのは主にVanAとVanBである.それぞれ,耐性遺伝子をPCR(polymerase chain reaction)によって検出するが感受性ディスク(VCMとTEICをそれぞれ30μg/ml含有)を用いて,vanAとvanB,vanCの遺伝子型の推定が可能である(図1).ただし,図2のようにVanAでも,ある程度TEICに感受性を示し,VanBと紛らわしい株があるので感受性結果だけでは必ずしも区別できないことに注意しておく3).
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