特集 Cardio Oncologyの現状と課題~専門医からプライマリケア医まで考えるべきこと~
6.がんと動脈硬化性疾患における炎症の役割と抗炎症治療の展望
松下(武藤)明子
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1琉球大学大学院医学研究科臨床薬理学講座
pp.2615-2618
発行日 2018年12月1日
Published Date 2018/12/1
DOI https://doi.org/10.20837/12018122615
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炎症は生体防御機構の一つであると同時に,がんや心血管疾患の発生・進展に大きく関与している。これまで抗炎症薬による心血管イベントリスク減少は報告されていなかったが,2017年に発表されたCANTOS(the Canakinumab Antiinflammatory ThrombosisOutcome Study)試験では予後改善の結果となり,ターゲットとしての炎症の妥当性が示唆された。一方,がんは疫学的に炎症や感染症との関連が報告されており,腫瘍からのさまざまな炎症性サイトカインの分泌,免疫細胞の浸潤も認められる。さらにがん薬物治療では,しばしば薬剤による酸化ストレス,炎症増加などが加わり,循環器系への有害作用が生じ,がん疾患そのものよりも患者の生命を脅かす場合がある。 本稿では,がんと心血管疾患,腫瘍循環器の視点で基礎,臨床研究をレビューし,抗炎症的治療の有効性と今後の展望について考えてみたい。