第III部 治療における最近の新薬の位置付け〈薬効別〉~新薬の広場~
認知症治療薬
池内健
1
1新潟大学 脳研究所 生命科学リソース研究センター 遺伝子機能解析学分野・教授
pp.480-486
発行日 2016年1月31日
Published Date 2016/1/31
DOI https://doi.org/10.20837/1201613480
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認知症の約7割を占めるアルツハイマー病に対して,4種類の抗認知症剤が治療薬として用いられている。剤形,服薬回数,副作用の違いにより,それぞれの薬剤の特徴を活かした処方設計が可能である。しかしながら,現在の抗認知症剤は,いずれも症候改善剤であり,脳内の病理進行を阻止することはできない。アルツハイマー病の分子病態に基づいた,特にアミロイドβを標的とした病態修飾薬が開発されている。アルツハイマー病患者を対象とした探索的臨床試験も活発に行われてきたが,第III相臨床試験の一次エンドポイントをクリアした病態修飾薬は,現在までに未だない。最近,サブ解析の結果や初期段階の臨床試験に一部の抗アミロイド抗体薬が部分的な有効性を示したと報告された。脳内では病理変化が始まっているものの,認知機能が正常な無症候期に早期介入により発症予防を試みる新しいパラダイムに基づいた臨床予防治験が欧米を中心に始まっている。