第 I 部 創薬と育薬
1.創薬 3)iPS細胞を用いた創薬研究
近藤孝之
1
,
井上治久
2
1京都大学iPS細胞研究所 増殖分化機構研究部門 幹細胞医学分野
2京都大学iPS細胞研究所 増殖分化機構研究部門 幹細胞医学分野 主任研究者
pp.231-236
発行日 2016年1月31日
Published Date 2016/1/31
DOI https://doi.org/10.20837/1201613231
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iPS細胞(人工多能性幹細胞)は,ES細胞(胚性幹細胞)と同様に,無限に増殖し,内・中・外の三胚葉それぞれの細胞へ分化することができる,多能性幹細胞である。このような多能性幹細胞を,ヒト体細胞から作出することが可能となり,創薬研究への応用が始まりつつある。患者iPS細胞から分化誘導して得られる細胞は,生理的な遺伝子発現環境における,病態再現の可能性を持っている。さらには,今までほとんどアプローチの方法がなかった孤発性病態のモデリングなど,全く新しい創薬プラットフォームとなり得ることが期待されている。そして,治療薬候補化合物の毒性試験に,iPS細胞を応用する取り組みも進んでいる。本稿では, 疾患特異的iPS細胞を用いた創薬研究の現状を紹介する。